秘伝! 感染対策 院内レクチャーのコツ! ●感染対策の講演の達人が今明かす!秘伝の院内レクチャー術! 著 者:矢野邦夫(浜松医療センター 副院長 兼 感染症内科長 兼 衛生管理室長) |
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目次
1章 院内レクチャーの予備知識編
秘伝!
其の一 院内での感染対策レクチャーの目的はどこにある?~講演とレクチャーの違い
其の二 方法別にみた学習定着率
其の三 例え話の効用~理解を容易にするアナロジー
其の四 スライド作成の原則
其の五 トークとスライドの相乗効果
其の六 スライド以外のツール
其の七 1回のレクチャー量と時間の設定
其の八 講演会やレクチャーの年間スケジュールの立て方
2章 院内レクチャーの準備編
秘伝!
其の一 テーマの決め方~今,自施設に必要なレクチャーは何か?
其の二 レクチャーの狙いをどこにおくか
其の三 レクチャーのための資料集め~エビデンスの取り入れ方を含めて
其の四 はずせないポイントをどこに置くか
其の五 具体例の取り入れ方~自施設の実情を見せながら
其の六 例え話の取り入れ方
其の七 レクチャー内容を印象づけるコツ
3章 院内レクチャー実践編
秘伝 私ならこう組み立てる!
其の一 手指衛生
其の二 標準予防策
其の三 インフルエンザ
其の四 ノロウイルス
其の五 結核
其の六 針刺し
其の七 カテーテル関連血流感染
其の八 カテーテル関連尿路感染
内容見本
はじめに
各病院においては感染対策チーム(ICT:Infection Control Team)が活発に活動しています。しかし,ICTのみが頑張っても感染対策は向上しません。感染対策は病院全体で実施すべきことであって,ICTが単独で実行するものではないからです。
院内感染対策の目的は「患者から患者へ,患者から医療従事者へ,そして,医療従事者から患者へ,病原体を伝播させない」というものです。決して,「形式的な感染対策」をするためのものではありません。目的を明確にした感染対策でなければならないのです。
(中略)
このような「形式的な感染対策」や「目的を見失った感染対策」にならないように,ICTが実施すべきことは,全スタッフに適切な感染対策の情報を提示するということなのです。そのために院内レクチャーを実施するのです。
レクチャーは単に開催すればよいというものではありません。そのレクチャーを聴講したスタッフが感染対策を理解して,それを実行しなければなりません。「理解するのが難しい」「お経を唱えるように単調で眠くなってしまう」「短時間で膨大な情報が提供されるため,むしろ混乱してしまう」「スライドの文字が小さくて読めない」といったレクチャーを行っても,意味がありません。意味がないどころか,聴講者もICTも無駄な時間を費やしてしまうだけなのです。レクチャーは聴講者が業務を止めて,もしくは,時間外を犠牲にして参加するものです。貴重な時間を費やすのですから,最大限に有効なものにしなければなりません。
本書はICTが感染対策の院内レクチャーを開催するときに,最大限に有効なレクチャーを提供するための参考になるよう作成されました。もちろん,完璧なレクチャーを開催することは不可能です。しかし,少しでも多くのスタッフが感染対策を理解して,適切に実行するための援助ができるようなレクチャーは可能だと思います。本書がICTの座右の書になることを希望します。
2013年11月吉日
浜松医療センター
矢野邦夫