感染管理おべんきょブックス① おべんきょ病原微生物 彼らの話も聞いてみた! ●病原微生物の勉強が苦手な人のために微生物界が立ちあがった! 監 修:森澤雄司(自治医科大学附属病院・感染制御部長) |
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目次
医療現場で覚えておきたい 病原微生物MAP
プロローグ:昔の名前で出たいのよ
1.人間さんとオレたち オレたち目線で考えてみよう
2.「感染」とか「感染症」とか言ってるけど…
3.オレたちを拒む人間さんの免疫あれこれ
4.オレたちが犯人にされる場所 感染症が起きる部位
5.敵を知る前にまずは己から 染められ,増やされ,覗かれてェ
6.オレたちの宿敵! コウキンヤク~
①どんな攻め方してくるの?
②これ以上は育ちましぇ~ん!-MIC
③敵もさるもの-PK/PD
④そりゃ,こっちだって耐えますよ!
7.擦られて,流されて ショウドクヤク~
8.オウさん,リョクさんの病院探訪
9.異種混合公開討論会「オレたちを拒絶する感染予防策を考える」
10.インドア・アウトドアトーク
エピローグ:最初で最後の電話トーク
医療関連感染の主な病原細菌一覧
内容見本
監修のことば
“孫子の兵法” に曰く,「彼を知り己を知れば,百戦してあやうからず。彼を知らずして己を知れば,一たび勝ちて一たび負ける。彼を知らず己を知らざれば,戦うごとに必ずあやうし」。読者の皆さんは医療現場で感染防止対策の担当者として日々奮闘されていることと推察します。わが国でも医療安全に広く注目が集まるようになってきていますが,しかし,医療関連感染について言えば,医療従事者ですら手指衛生が十分に実践できていないなど,妥当な理解を得ているとは言い難く,ましてや “情報の非対称性” が著しい一般の方々に理解していただくのは困難を極めます。病院はそれ自体が感染症の温床であり,医療行為は必ず内在する感染症のリスクがあって,血管内留置カテーテル関連血流感染症や外科手術部位感染症など,語弊を恐れずに言えば “起こるべくして起こる” 合併症を医療従事者の不断の努力により防止しているのです。さらに病院という限定された空間で多数の患者に抗菌薬が投与されている状況は抗菌薬耐性菌を集約する結果となり,一般社会では極めてまれな高度耐性菌が病院では日常的に跋扈しています。高齢化社会に伴う患者数の増加,医療の高度先進化の一方で,医療費削減が求められる現状では病院においても経費削減が経営上の必須の課題となり,医療の現場はますます少ないスタッフ数や予算によって多くの業務を負担しなければならず,結果的に患者と医療従事者のいずれにとっても安全が脅かされています。細菌なんかに負けている場合ではないのです。
しかし,細菌を見たらそれは必ず敵なのでしょうか,新しい抗菌薬や新しい消毒薬で必ず戦わなければならないのでしょうか。もう 40 年以上も前にモロボシ・ダンは私たちに教えてくれたはずです。「それは,血を吐きながら続ける,悲しいマラソンですよ,,,(ウルトラセブン 第 26 回 「超兵器 R1 号」)」。再び “孫子の兵法” に曰く,「百戦して百勝するは,善の善なるものにはあらず。戦わずして人の兵を屈するは,善の善なるものなり」。残念ながら私たちは「もやしもん」ではないので細菌を目に見ることが出来ません。見えないもの,知らないことに私たちは恐怖を感じます。まず知ること。
そこで,病原微生物の皆さんに話を聞いてみることにしました。感染症診療や感染防止対策をあちら(病原微生物)の目線から語っていただき,感染管理おべんきょコミック「ミッション IC ポッシブル」のヒロイン,われらのアイコくん(感染管理ビギナー看護師)に聞き手をお願いしました。その中で読者の皆さんに “おべんきょ” をしていただき,あるいは院内スタッフの方々へのレクチャーのヒントにもなれば,というのが本書の基本コンセプトです。微生物の皆さんには臨床微生物学,感染症学,感染防止対策学に基づきリアルに語ってもらいました。
話せばわかります,きっと。
2014 年 1 月
森澤雄司
自治医科大学附属病院・感染制御部長,准教授
感染症科(兼任)科長,総合診療内科(兼任)副科長
栃木地域感染制御コンソーティアム TRIC’K’ 代表世話人
アイコからのごあいさつ
こんにちわ。駆け出しICNの野田アイコと言います。
アタシはまだ感染管理の勉強を始めたばかりで,チンプンカンプンなんですわ。
中でも,微生物の話がとっつきにくいというか,とにかく苦手ですねん。
みなさんはどうでっか?
いろんな本を読んだりして勉強しとるつもりなんやけど,とくに細菌なんかは種類も多いし,どうにも途 中から眠くなってしもうて,なかなか頭に入りまへんねん。
ところが,アタシは感染管理おべんきょコミック(ミッションICポッシブル-アイコの感染管理奮戦記)で主人公をやらせてもうとるんですが,そこの出版社側から「主人公がレベルアップせんと話が前に進まんので,きばって勉強して,ぜひ苦手分野を克服してほしい!」と厳しい要求を突きつけられてしまいまして,これは何とかせなあかんということで,今回,微生物界の全面協力を得て,この企画が実現したというわけです。
そうです!ナ,ナ,ナント!細菌さんを中心に微生物のみなさんが自分たちのことを語ってやろうではないか,とアタシのために一肌脱いでくれたんです。まさに空前絶後!前代未聞!まぁ,微生物界のほうでも,前々から言いたいことがいろいろあったらしく,いい機会だということで,彼らもこの企画に二つ返事で賛同してくれました。
ただし,条件がひとつ。人間界からは決して口を挟んではいけないということです(「ふむふむ」と「なるほどぉ」のあいづちはOK!)。それから文中の細菌さんたちの色なんですが,今回は便宜上,グラム陽性菌の青は■の色で,グラム陰性菌の赤は■の色で表しとるそうですので,その点,ご了承の上,お読みください。
この本は,楽しく学んでいける新感覚の感染管理おべんきょブックです。ちょっと変わった視点から微生物をお勉強するのも,オモロイですし,意外と今まで気づかんかったような新しい発見があるかも知れまへん。そんなこんなで,黙って彼らの話に耳を傾けてみようと思います。
さぁ,みなさんもどうぞご一緒に!