感染症・感染対策専門出版

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矢野流

感染予防策の考え方 知識を現場に活かす思考のヒント

 ●情報としての感染対策の知識を現場で実践するための思考のヒントが満載!
 ●感染対策の達人が自らの経験を踏まえて書き下ろした渾身の1冊!

 著 者:矢野邦夫(浜松医療センター 副院長 兼 感染症内科長 兼 衛生管理室長)
 定 価:本体2,700円+税
 判 型:A5判 200頁
 発行日:2015年11月10日
 ISBN978-4-906844-09-8


目次

1 そもそも標準予防策の心得とは
 解説
  ・まずはじめに… 
  ・標準予防策って何をするの? 
  ・標準予防策の真骨頂は個人防護具の装着でわかる! 
 エピソード
  ❶安全装置付き静脈留置針~苦労話 
  ❷針刺し(1)~信じられない話 
  ❸針刺し(2)~いつでも発生しうる話 
  ❹針刺し(3)~自分だけではなく, 他人も守って! 
  ❺血液曝露~経験の積み重ねはないの? 
  ❻手指衛生~子どもの教育から 
  ❼手袋の使いまわし~忙しいから交換しなくてもいい? 
  ❽マスク~敢えて曝露するの? 
  ❾咳エチケット~常に啓発が必要! 
 シーン
  ❶麻疹~患者さんの動線すら気になる 
  ❷救急外来~状況によっては個人防護具はフル装備になる 
 Notes
  ①標準予防策の歴史 
  ②血液媒介病原体の針刺し後の対応 
                                 
2 手指衛生の肝 簡単なことが一番むずかしい
 解説
  ・手洗いは挨拶と同じ! 
  ・手洗いあれこれ 
 エピソード
  ❶重度精神遅滞の施設での赤痢のアウトブレイク
    ~手指衛生ができない状況ではどうなるか? 
  ❷手洗い場がカルテ置場に~手指衛生の無理解者がたどり着くのはここだ! 
  ❸ポビドンヨードの手洗い~手術室と病棟を一緒にしない! 
  ❹石鹸と流水の手洗い後のアルコール手指消毒
    ~やりすぎは事態を悪化させる 
  ❺米国の手術室の手洗い~いい加減に見えて, 実は最先端! 
 シーン
  ❶手術時手洗い~よかれと思ってやったことが, 仇になって! 
  ❷ノロウイルス胃腸炎のアウトブレイク~患者さんの手洗いの大切さ 
  ❸NICUでのMRSAのアウトブレイク~手洗いのタイミングは? 
 Notes
  ③WHO:手指衛生の5つのタイミング 
  ④石鹸の管理 
  ⑤ノロウイルスとアルコール 
                                 
3 個人防護具 感染から身を守る意味
 解説
  ・今も昔も防護具が命を守る!
  ・手袋
  ・ガウン
  ・マスク
  ・ゴーグル・フェイスシールド
 エピソード
  ❶手袋のままでキーボード~他人を汚染してもいいの?
  ❷手袋の再生~昔話となりました
  ❸鼻出しマスク~その目的は何?
  ❹N95マスクをした一般人~窒息してた?
 シーン
  ❶個人防護具の着脱~正しい順番で!
 Notes
  ⑥マスクの再利用と使い捨て
  ⑦フィットテストとシールチェック
  ⑧飛沫感染・空気感染
  ⑨エボラウイルスと個人防護具の着脱

4 環境清掃 どこまでやるか?
 解説
  ・学校の掃除, 病院の清掃
  ・清掃すべきはどこか?
  ・環境表面と消毒
 エピソード
  ❶無菌室のホルマリン燻蒸~体に有毒な薬剤だった!
  ❷手術室の床の消毒~手術室の床は手術部位感染の感染源にはならない!
  ❸温水洗浄便座~健康なら心地よいツールだけど…
  ❹浴室やシャワー室の乾燥~濡れたままは病原体の増殖の温床となる
  ❺透析室とベッド配置~人は城, 人は石垣, 人は堀
  ❻聴診器~汚染物を持ち歩く?
 シーン
  ❶台風後の水漏れや水道漏れ~古い病院は大変!
  ❷道路工事~アスペルギルス胞子の浮遊地帯
 Notes
  ⑩ノロウイルス胃腸炎の患者さんの病室の消毒
  ⑪スポルディングの分類

5 感染経路別予防策 標準予防策と何が違うか
 解説
  ・違いを例えて言うなら… 
  ・ここが決定的な違い!
 エピソード
  ❶肺炎と思われたが結核であった症例~結核は擬態が得意!
  ❷個室が足りないときの帯状疱疹の患者さんの入院をどうする?
  ❸接触予防策にスリッパ?~感染対策に儀式はいらない!
  ❹接触予防策の解除とは?~何もしなくてもよいということではない!
  ❺術前の感染症検査は必要?~検査は時として油断を生む!
 シーン
  ❶結核患者さんによる空気汚染~長時間の空気の共有で伝播する
  ❷HIV感染者/エイズ患者さんの入院~過剰な感染対策は不要!
  ❸満床時の入院先~状況に応じて対応する
 Notes
  ⑫感染経路別予防策
  ⑬空気感染隔離室
  ⑭防護環境
  ⑮潜在性結核感染の治療
  ⑯HIV感染症の臨床経過
  ⑰空気感染の種類

6 院内ラウンドの視点 問題も答えも現場にある!
 解説
  ・百聞は一見にしかず!
  ・現場の状況を観察できる
  ・現場の小さな声を聞くことができる
  ・器材の配置場所
  ・ラウンドは狙いを定めて
 エピソード
  ❶託児所~感染対策の難所
  ❷インフルエンザの院内感染~いきなりやってくる恐怖!
  ❸院内掲示~ポスターには有効期間がある!
  ❹生花やドライフラワー~病棟に持ち込んでもいい?
 シーン
  ❶耐貫通性廃棄容器の満載度~腹八分目のお勧め!
  ❷製氷機~その氷は安全?
  ❸廊下の工事~院内の土埃は避けたい
 Notes
  ⑱インフルエンザワクチン
  ⑲ノロウイルス

7 耐性菌対策 生まない術,拡げない術
 解説
  ・感染対策を逆行させる多剤耐性菌!
 エピソード
  ❶抗菌薬と感染対策~深い関わり
  ❷抗菌薬が耐性菌の増殖環境をつくってしまう!
  ❸緑膿菌vs抗菌薬, 黄色ブドウ球菌vs抗菌薬
  ❹隔離予防策におけるスタッフのコホーティング~私たちはどうなるの?
  ❺多剤耐性菌における接触予防策の開始のタイミング
 シーン
  ❶カルバペネム耐性腸内細菌科細菌の保菌者のケア~接触予防策が必須!
  ❷多剤耐性菌は知らないうちに蔓延している!
 Notes
  ⑳多剤耐性菌
  ㉑アンチバイオグラム

8 感染対策の院内教育 「やらされる」から「やる」に変えるコツ
 解説
  ・「やらされる」感染対策と「やる」感染対策
  ・目的の設定
  ・内容の理解
  ・重要性の理解
  ・具体的にどうするか?
 エピソード
  ❶抗菌薬マニュアル~自施設で作成を!
  ❷抗菌薬の適正使用~病院経済からのアプローチ
  ❸マキシマルバリアプリコーション~朱に交われば赤くなる
 シーン
  ❶古い感染対策を突破する~若手を活用
  ❷インフルエンザワクチン~「他人のため」は「自分のため」
 Notes
  ㉒学習定着率
  ㉓先天性風疹症候群

・参考図書
・巻末資料:感染症と感染予防策一覧
・索引


内容見本


 この本を手にとって読んでおられるみなさんは,おそらくほとんどの方々が職場で感染対策を仕事としておられるのではないでしょうか。みなさんが医療の世界に入り,そして感染対策の担当者となったときから,感染防止に関する膨大な情報のシャワーを浴び続けてきたことと思います。おおむね退屈な微生物の話からはじまり,その治療に使う抗微生物薬,医療関連感染,各種感染防止策,サーベイランス,疫学,ガイドラインなどなど,一口に感染防止といっても実に幅広い分野から多岐にわたる抱えきれないほどの情報をインプットし,しかもそれらを基に現場で実践していかなくてはなりませんから,その労力がいかに大変なものかは容易に想像できます。
 わが国の感染対策は,ここ20年ほどで目覚ましい進展をとげました。感染対策の仕事をしていれば,誰でも耳にしたことのある「標準予防策」が1996年に登場したのを境に状況は一変したのです。 逆に言うと,今では常識となっているこの考え方が登場して,まだたったの20年しか経っていないんですね。それ以前は「標準予防策」のような感染防止の拠り所となる概念が不十分な環境で感染対策が行われてきたわけで,そんな時代があったことを想像できない方も多いのではないかと思います。
 かく言う私もこの20年余にわたるわが国の感染対策の進展の中に身を置き,国内外で日々刻々と更新される最新情報をインプットしては,自施設で実践したり,講演や著書などを通じてみなさんに紹介したりしてきました。そしてある時ふと思ったのです。今では当たり前のように知られる「標準予防策」ですが,果たして本当に理解されているのか,言葉だけがひとり歩きしてはいまいかと。たとえば,「標準予防策を徹底しよう!」と言われたら何を徹底したらよいのか,すぐに頭に浮かびますか?もちろん浮かぶ人もいるでしょう。手指衛生,個人防護具,咳エチケットなどなど。しかしその先が問題なのです。言葉としてはスラスラ浮かんできても,それらの知識をちゃんと現場で活かし実践するための本質的な理解がなされているかということです。
 アタマではわかっているつもりでも,それを実践できなければ意味がありません。実践につながる理解とは本質的な理解を意味します。本質的な理解があってはじめて応用が利きます。これは感染対策を担当するみなさんにとって大変重要なことです。なぜなら本質的な理解と応用力がなければ,他者への説明,他者への説得は難しく,感染対策活動が前に進まないからです。
 本書では,感染対策の基本中のキホンである「標準予防策」と「感染経路別予防策」を軸に,今まで私自身が現場で経験してきたこと,あるいは日頃から実践していることを紹介しながら,私流の感染予防策の考え方をまとめてみました。知識を現場で活かすというのは大変難しいことです。そんな時の思考のヒントになればという思いで本書を執筆しました。日々,多忙な業務に追われる感染対策チームのみなさんのこれからの活動に少しでもお役に立てば,筆者として幸甚です。最後に,このような企画を提示していただいた(株)リーダムハウスの多賀友次氏に心から感謝の意を表します。

2015年10月吉日

浜松医療センター
矢野邦夫